考えるマカロニ

atsu-atsuの脳内のシナプスのお遊戯を文章化したものです。

ta ku ha tsu

うちでよさこい踊りの練習をしていたら、

チャイム鳴る。

 

モニタには知らないおじさんが映り、

まくしたてるように喋っている。

 

聞き取れたのは「たくはつしております!」

 

玄関に出てみると頭にタオルを巻いて、

手に仏様関連らしき木の棒を持った、

60〜70代くらいの歯のまばらなおじいさん。

 

やっぱりなにかまくしたてているけれど、少ししか聞き取れない。

「野宿をすることもあります!」

「托鉢をしながら!」

「二百何十何回やってます!」

 

これらの発言と風貌を総合してプロファイリングした結果を、

ぶつけてみる。

 

「お遍路さんですか…?」

 

「もちろんそうです!」

 

そして野宿していて警察に文句言われたというエピソードを

臨場感たっぷりに大声で再現してくれるものだから、

少しご近所のことも気になりだす。

 

はあ、はあ、と不安げな相槌を打ちながら聞いていたが、

話はこのように帰結した。

 

「托鉢をお願いします!」

 

お待ちくださいと言いおき家に入る。

托鉢なんて初めてなので、いくらがいいのか頭がぐるぐるする。

 

100円…じゃあ少ない…?

財布の小銭をあらためると、

100円玉が2枚と50円玉が1枚、

10円玉と1円玉が数枚。

 

考えた末に、250円にする。

 

玄関を出ておじいさんに

「あまり余裕がないので少ないですけど…」

と渡した。

 

おじいさんは、

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

と去っていきかけて

表にあった我が家の車の脇で振り返り、

「いい車ですね!」

と言った。

 

そして

お体にお気をつけください、とか

交通安全、とか

気遣いの言葉を残して去っていった。

 

タクシーお遍路ならぬ

タクハツお遍路。

 

洗礼を浴びました。